日本で調理師として働いている多くの人が、労働時間の長さや給料の低さなどの労働条件に悩んでいるようです。
さらに年功序列の職場も多く、職場の雰囲気がストレスとなってしまう人も。 「料理を作る仕事が好き。でもこんな職場環境には耐えられない・・」そんな人は心機一転、オーストラリアでキャリアを築いてみませんか?
今回は日本とオーストラリアのシェフの労働条件比較と、オーストラリアでシェフをするメリット・デメリットについて紹介します。
日本vsオーストラリア 調理師の労働条件比較
給与の違い(2022年時点)
日本
平均収入:395万(給料分布:291〜608万円)
平均月収:33万円
平均時給:1,043円
※参考 求人ボックス
オーストラリア
平均収入:$62,500/年(給料分布:$57,500〜$84,437)
平均月収:$5,208/月
平均時給:$32.05
※参考 talent.com
上の比較を見ると、オーストラリアのシェフは日本よりも給料が高いといえます。
日本のシェフの平均年収が395万なのに対し、オーストラリアの平均年収は$62,500($1=93円の場合、約585万円)です。
もちろんオーストラリアは日本より物価が高いため、その点を考慮する必要があります。
オーストラリアの中でも物価の高い、シドニーの平均生活費は$1,453/月ほど。シェアハウスの一人部屋またはアパートを2人でシェアした場合の家賃は$800-$1,200/月なので、家賃と生活費を合計した月の出費は$2,653程度となります。
シェフの平均月収は$5,208なので、手元に残せるお金は十分あると言えます。シェフの給料があれば都市のシドニーでも余裕をもって一人暮らしできるでしょう。
労働時間の違い
労働時間は1日7-8時間程度で、定時になれば帰るという人がほとんど。
少人数で運営しているレストランやカフェの場合は忙しいと残業することもあるようですが、その分はしっかりと加算して払われます。
飲食業に限らず、日本では「始業の15-30分前には出勤する」といったルールがある所も多いですが、オーストラリアでは直前にくる人がほとんど。5分前や時間ぴったりに来ても責められることはありません。
有給や育児休暇もあり、制度はあるけど取得しづらいなんて雰囲気もないため、制度を有効に活用している人が多いです。 サービス業のため、もちろん土日や祝日に働くことはあります。
しかし法律で休日手当が定められており、給料が1.5-2.0倍に増えるなど、そのための手当てもしっかりしています。
職場環境の違い
オーストラリアには年功序列の文化がなく、先輩を敬うという感覚はあまりありません。
より重要視されるのはシェフとしての階級。シェフの階級は見習いシェフからヘッドシェフまであり、資格や経験によって決まります。 年齢に関係なく、スキルを上げれば階級も上がるので、努力次第でどんどん昇進できるのが魅力です。
そのスピード感のある昇進システムのため、働いて5年もすればほとんどの人は経験の豊富なシェフとして扱われます。 さらにオーストラリアでは調理師免許(サーティフィケートⅢ)を取得するとすぐにシェフとして働くことができます。入ってすぐにサブ料理を任されることもあり、資格取得後すぐに経験を積むことができます。
反対に、常に上を目指すというスタイルが苦手な人や自分のペースで働きたい人に合った環境でもあります。 なぜなら「年齢が上だから」というだけの理由で責任の重い仕事を任されることがなく、階級が下だからといって酷く見下されることも少ないからです。
また、様々な国籍や宗教が入り混じった国なので、他人にそこまで干渉しない、気にしすぎない人が多いのも理由かもしれません。 そんな自分の好きな働き方やポジションを選べるところもオーストラリアならではと言えます。
外国人オーナーのお店では上記が当てはまらないことも
オーストラリアの調理師についていいことばかり言ってしまいましたが、上記がすべての店で当てはまるわけではありません。 特にアジア人などの外国人が経営しているお店は労働基準を守っていないところが多いです。
中には最低賃金以下で働かせている、労働時間が異常に長い、週休が1日しかないといったところも。
このような労働条件が悪いところでは、職場の雰囲気もギスギスとしているところが多く、短期間でスタッフが辞めていくというのも珍しくありません。
その理由としては、
・母国でのビジネススタイルで運営している
・雇用者も外国人なので文句を言わず働いてくれる
というのがあるよう。 オーストラリア人オーナーのお店だとスタッフもオーストラリア人が多く、労働条件がいいのですが、求められる経験や英語力は高いです。
その点外国人が運営しているお店は多少スキルが足りなくても雇ってもらえるので、最初は仕方ないという気持ちで働いている人が多いよう。
現地に来てすぐに条件のいい仕事がほしい人は、日本で少しでも経験を積むことと英語力を上げることが必要となります。
オーストラリアで調理師になるその他のメリット
永住権が取得できる可能性も
将来オーストラリアに永住したい人にとってもシェフはおすすめ。
オーストラリアで自力で永住権を取れる職種は限られており、その中で人気なのはIT職、会計士、看護師、チャイルドケア、シェフなどがあります。 シェフは他の職業と比べて高い英語力が必要とされます。
さらにビザ申請に大学学士が必要な他のコースと違い、ディプロマ(学士より下の学位)で申請できるので学費も大幅に抑えられます。
ビザ申請にはスポンサーをしてくれる雇用主が必要なのですが、シェフの需要は大きいため可能性は十分あるといえます。 経済的リスクが小さく、永住権が取れる可能性があるため、未経験でもオーストラリアでシェフを目指す人が多いです。
需要が高く仕事先が見つかりやすい
オーストラリアで調理師は最も不足している職業の一つ。
オーストラリアでは海外の料理がとても人気で、街を出れば世界中の料理が食べられるほど。そのため外国人シェフの需要が高く、頻繁に求人募集がされています。
さらにシェフは現地のオーストラリア人にはあまり人気のない仕事のため、政府も就労ビザや永住権を与えて人材を確保しようとしています。
もちろんスキルがあればいい職場が見つかりやすいのですが、未経験で学校を卒業したての場合でも仕事は比較的簡単に見つかるといえます。 ただしその場合は下のポジションから始めなくてはいけなかったり、職場の選択肢が狭まったりすることも心に留めておきましょう。
オーストラリアでシェフを目指すデメリット
英語力が必要
一番の壁となるのはやはり、英語力が必要ということです。
オーストラリアで調理師の需要はとても高いため、選ばなければ職場は簡単に見つかります。しかし海を超えてまで、日本と似たような過酷な環境で働きたくないですよね。 そこで必要となってくるのが英語力です。
先ほども述べた通り、オーストラリア人が運営しているお店や待遇のいい所で働くには英語を習得する必要があります。一概には言えませんが、不自由なく長期滞在できる英語力である、IELTS5以上が一つの目安になるかと思います。
永住権を申請する際にも英語力の証明を提出する必要があり、その基準は年々上がっています。
英語力に自信がない人は語学学校に通うというのもおすすめです。
他文化を理解する必要がある
移民の多いオーストラリアでは、オーストラリア人だけではなく世界中から集まった人たちが働いています。
そのためキッチンも多国籍になりがちで、文化の違いに驚いてしまうことも。
特に日本人は他国と比べて真面目で仕事をする傾向があり、仕事仲間が怠けていて不満がたまることがあるようです。
些細なコミュニケーションのすれ違いから、関係が悪くなってしまうこともあるので、異文化を理解する必要があります。 さらにオーストラリアでは料理に使う食材や器具、調理法などが日本と大きく違うことがあります。
そのため、日本で経験がある人は戸惑ってしまうこともあるかもしれません。