エンジニアというとどんなイメージがあるでしょうか ? 機械油にまみれて機械をいじっている人、自動車の修理工、手先の器用な人、などでしょうか。エンジニアとメカニックは重なる要素もあり混同されやすいのですが、大雑把に分けると研究職がエンジニア、実践職がメカニックです。
オーストラリアでは、このエンジニアとメカニックの両人材が不足しているため、分野にもよりますが永住ビザの取得に有利になっています。
今回は、なぜオーストラリアでエンジニアを目指すのか、エンジニアにはどんな種類があるかについてご紹介します。
どうして今国際的なエンジニアになるのか
国際化に遅れをとる日本
日本では過去20年以上「国際化」が言われ続けてきましたが、なかなか「化」、つまり国際社会に変わりつつあるという域を出ませんでした。しかし、さすがに情報革命後のここ数年間で日本社会も随分国際的になってきました。これはITの分野に限らず、エンジニアリング、金融、サービスの分野すべてにいえることです。
日本は70年代以降、工業分野、技術革新においては世界をリードしてきました。しかし近年は頭打ちとなり、国別の国際競争力を見ても、高い技術力という評価を維持しているにもかかわらず、年々順位が下がっているのが実状です。
理由は技術を商品化できていないことに尽きます。その一因として、世界共通語である英語でのコミュニケーション力不足のため、世界と情報のトランスファーができていないことが挙げられています。
エンジニアに必要とされる英語力
実際に大手・中堅企業のエンジニアの人から「現場に出て英語力の必要性を実感した」という声も多く聞かれます。また、留学生のUターン就職(留学先から日本に帰国しての就職)の斡旋会社は口をそろえて「英語のできるエンジニアが欲しい」と言いますが、現実には海外留学生は文系学部生が多く、理系学部生は非常に少なくなっています。
2005年に日本もワシントン・アコードに正式加盟し、日本の技術力や技術者教育が名実ともに注目を集めています。この機会に海外の大学に留学し、技術と理論、そして学位と英語力のすべてを身に着けるという選択肢を、より多くの人が考えてもいい時代になってきました。そしてオーストラリアはその中でも留学地として最適な条件をそろえています。
オーストラリアでエンジニアになるメリット
メカニックやエンジニアが不足している
オーストラリアでエンジニアリング?技術?とピンと来ない人もいるかもしれませんが、英語圏であるということで、英語と技術を学び、「英語のわかる技術者」「国際感覚を身につけた技術者」として日本や世界で活躍できるチャンスがあることがまず挙げられます。
それでもオーストラリアである理由はありませんが、オーストラリアにおいてはエンジニアやメカニックは、オーストラリアでは不足気味(分野によってはかなり不足)ですので、永住ビザが取得しやすい=海外での就労経験を得られる、ということもあります。そして人手不足であるがために、待遇や給与も平均よりもかなり高い傾向にあります。
日本人で永住ビザを取得しても、英語力ではどうしてもオーストラリア人にはかないませんから、事務系の仕事ですと給与水準は低くなりがちです。しかし、技術勝負のエンジニアとメカニックは、言葉よりも高度な技術力のほうが重要視されます。たとえ英語に自信のない人でも、オーストラリアで学位を取得したくらいの英語力があれば十分対応できます。
日本に帰国する場合でも、オーストラリアへの留学生が勤勉であることは企業から非常によく知られるようになっており、中でも工学系と言うことになれば、面接即採用、ということも非常に珍しくありません。
つまり、オーストラリアで技術を学ぶメリットは、技術力や英語力、国際感覚を身に着けることだけではなく、生活にも直結すると言うことです。
エンジニアリングの分野が進んでいる
英語や国際感覚、就職だけではありません。留学、勉強そのものにおいてもオーストラリアの工学部に留学する意味は十分あります。
IT技術の根幹の部分はやはりアメリカに一日の長があるといえますが、オーストラリアは早くからITの活用に定評があります。連邦政府もいち早く電子化を取り入れ、今では観光・学生ビザなどの申請や税金の手続きは、すべてオンラインでできます。このIT活用の分野は、世界的に見ても非常に進んでいます。
鉱業資源が豊富ですから、当然ながらマイニング技術は発達していますし、機械工学も実践的だといえます。F1の名門ウイリアムズやマクラーレン・チームのテクニカル・ディレクター、サム・マイケル(知る人ぞ知る、という感じですが)は史上最年少の20代でこのポジションについています。彼もオーストラリアの大学を卒業しています。
オーストラリアの医療技術が進んでいるのも、医療機械の発達が1つの要因だと言われていますし、農業も同様です。
工学と言えば「製造業」を思い浮かべるでしょう。オーストラリアは人口2000万と、市場規模としては小さく、また人件費も高い為、生産に向いている環境ではない為、生産技術が高いとはいえません。しかし、鉱業向け、医療向け、農業向けのカスタマイズ製品を、単品もしくは少ないロットで受注生産しているような業者が多く、まさに知識集約型の工学だと言えます。
日本や現地でのキャリアが目指せる
オーストラリアでエンジニアリング・コースを修了すれば、
1)オーストラリア永住ビザの取得に有利
2)英語のできるエンジニアとして日本での就職にも有利
3)世界中で仕事のチャンスがある
という3点でお薦めです。
特にオーストラリア永住ビザは魅力だと思います。 留学生で新卒の場合は、いくらビザがあってもオーストラリアでの就職は簡単なことではないのですが、一部の資格(教師や医療関係)は就職にも有利になっています。エンジニアはそれら以上、と言っても過言ではありませんし、また、オーストラリアのエンジニアの初任給は日本の新卒の1.5倍以上と、待遇がいいことも魅力です。
エンジニアとひと口に言ってもかなり幅は広いのですが、基本的にどの分野でもニーズは高いといえます。余談ですが、技術立国ニッポンのイメージは今でも強いため、仮に新卒であっても日本人というだけでニッポン・プレミアムが(そう強いというほどではないものの)多少なりとも期待できます。事実、日本人は文化的背景からか、細かいところによく気が付くと思いますので、ユーザー・フレンドリーなモノづくりに向いているといえます。
オーストラリアならではのマイニング(鉱業)、今後より高い需要が見込める機械、電気、電子、土木(環境含む)、化学は特にお薦めの分野です。文科系からの転身は簡単ではありませんが、十分な可能性もありますし、もともと理系バックグラウンドの方であれば、エンジニアリング・コースへの留学を検討してみる価値は十分にあると思います。
エンジニアの種類とは?
環境エンジニア
オーストラリアは環境に対する意識が高く、現地で環境を学ぶコースを目指す人や、環境エンジニアになりたいという人は多いです。
少し前の話になりますが、2020年までに消費電力の20%を「renewable energy(再生可能エネルギー)」による電力でまかなうという法案が、オーストラリア議会で可決されました。再生可能エネルギーとは、石炭や石油などの化石燃料ではなく、文字通り再生できる資源を活用して生み出されたエネルギーのことです。具体的には、太陽光、風力、地熱、潮力、バイオマス、水力などをエネルギー源としたものです。
地球温暖化だけではなく、化石燃料自体の埋蔵量の問題もあり、再生可能エネルギーに関わる技術は、21世紀の主役となる技術になると言われています。それどころか、主役にならなければ人類がこの先どうなるか…、というほど重要な技術だとも言えるでしょう。
再生可能エネルギーに関わる技術には、家庭用のソーラー・パネルといった小さなものから風力発電といった大きなプロジェクトまで、その規模はさまざまです。いずれにしても、その技術者はプロジェクトのサイズや種類を問わず不足しています。これはオーストラリアに限ったことではなく、新しい技術ということもあり、世界中で不足しているといえます。
「今後、大量に必要になると分かっているにもかかわらず、不足している」ということは、今からその技術を学ぶ方にも将来的に十分なチャンスがあるということです。しかも、自分の子どもや孫を守るための技術でもあります。日豪はもちろん、世界市場における将来性、待遇、やりがい、意義、すべてを兼ね備えた分野ですので、この分野に近いバックグラウンドがある方はもちろん、これからキャリア・チェンジをお考えの方にもお薦めの専攻分野です。
具体的なコースとしては「環境工学(Environmental Engineering)」が代表的な学科ですが、それ以外でも、電気、機械、電子、化学、土木など多岐にわたる分野が、この再生可能エネルギーに関係があります。すなわち、進路を選ぶ際のコースの選択肢は広いといえます。
バイオメディカルエンジニア(医用生体工学)
バイオメディカルエンジニア(医用生体工学)とは、医学と工学を融合した分野で、工学技術を医療に応用、あるいは生体の仕組みを工学に応用する学問です。その応用例として様々な医療検査機器、人工心臓などの臓器、医療用ロボット、DNAコンピューティングなどがあげられます。医療においてのみを見ても予防、診断、そして治療とが一体化した未来の医療システムの構築に貢献することは間違いありません。
この分野もやはりオーストラリアが世界に誇る分野の1つです。少子高齢化が進む中、社会を持続的に発展させる為、健康と社会福祉に貢献できる、やりがいのある医療・工学分野です。
本専攻の領域は、概ね「物理、電気、機械系」と「化学、材料、生物学系」の2つにわけられ、そこからさらに細分化されます。
工学関係の別の分野からの転身、理学系や医療関連からの転身はもちろん、まったく畑違いの分野からの挑戦、高校を出て大学に進学する際の選択肢、いずれの場合も意義のある学びとその後のキャリアになるでしょう。